現場へ! 「隔離」を伝える②
小春日和の12月初旬だった。旧産炭地として知られる福岡県の筑豊地方にある古民家のギャラリーに、イーゼル(画架)にのった12枚の絵が並んでいた。
熊本市現代美術館の学芸員だった、蔵座(ぞうざ)江美によるギャラリートークが始まった。
縁側で和む女性を描いた油彩「日向(ひなた)ぼっこ」(1996年)。作者は大山清長だが、よくみるとサインは〈OKAWA〉とある。
「自分で描いた作品なのに、本名を書けなかった時期があったんです。どんな思いだったかと想像するだけで胸が痛みました」
ハンセン病になったために国立療養所「菊池恵楓園(きくちけいふうえん)」(熊本県合志(こうし)市)に隔離された人々による作品だった。本名を変えられていた大山清長が、園名〈大川一(はじめ)〉として生きた時代のものだった。
彼らや彼女らは、病が癒えた後もふるさとに戻ることはかなわず、園内に絵画クラブ「金陽会」をつくり、絵に没頭した。大山はふるさとの奄美大島を題材にした作品を残し、2015年に92歳で世を去った。
蔵座と金陽会との出会いは2…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル